大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)2930号 判決

本件建物及びこれに隣接する控訴人の居宅の配置状況が原判決添付の図面のとおりであることは、先にみたとおりであって、控訴人が本件建物の東側の空き地部分の南端部分を自動車駐車場として、その他の部分を公道への通路として使用していること、被控訴人の従業員や客が右空き地部分にオートバイや自動車を駐車していること、控訴人がその主張の頃その主張のようなフェンス及び立札を設置したこと、さらに、控訴人がその主張の日にその主張のようなフェンスの延長工事をしようとし、訴外友部操らがこれを阻止したことは、いずれも当事者間に争いがない。

そして、右争いのない事実と《証拠》を総合すると、被控訴人は、本件賃貸借契約の締結に際して、本件建物の北側及び東側の空き地部分をその従業員又は寿司店への客の自動車の駐車場として使用することについて控訴人の了解を求め、控訴人も、自らの自動車の駐車場や公道への通路としてこれを使用する必要があったが、互いに譲りあってこれを共用することとして、被控訴人の申出を了解したこと、ところが、先に説示したように、本件賃貸借契約締結後程なく、被控訴人の従業員によるごみの処理方法等をめぐって控訴人と被控訴人との間に紛議が生じ、その関係が円滑を欠くようになって以来、控訴人が通行の妨げになるとして訴外友部操又はその他の従業員に駐車中の自動車の移動方を求めても、同人らが快くこれに応じないようなことがあり、控訴人も、右空き地部分は被控訴人に賃貸してはいないなどと言い出したり、直接客に自動車の移動方を申し入れるなどしたため、その使用をめぐって当事者間にしばしば紛議が生じるに至ったこと、このようなところから、控訴人は、昭和五二年一一、一二月頃、被控訴人と格別の協議を遂げることなく、前記図面表示の位置にフェンスを設置し、右空き地部分と公道との接する部分に控訴人主張のような立札を立て、さらに、昭和五四年六月及び八月頃、再度にわたって右フェンスを公道まで延長する工事をしようとしたこと、これに対して、訴外友部操は、右のような措置を採られたのでは、営業の妨げになるとして、これを物理的に阻止するなどしたことの各事実を認めることができる。

ところで、そもそも、建物の賃借人は、当該建物の使用のために最低限度必要な敷地を利用する権利を有し、反面、賃貸人は、これを使用させる義務を負うことはいうまでもないが、これを超える部分の敷地の使用関係、とりわけ本件におけるように、賃貸人と賃借人が一定の範囲の敷地を共用することになるような場合におけるその使用関係については、賃借人としては単に事実上その使用を許容され、賃貸人としてもそれを一応認容しているという事実上の関係にとどまるものと解するのが相当である。そして、このような場合の敷地の使用方法又はその変更については、専ら当事者間の協議による互譲にまつべきところであって、賃借人において当然にこれを使用することができるものでもなければ、賃借人においてなんら協議を遂げることなく一方的にその使用を禁ずることができるというものでもない。

これを本件についてみるに、本件建物の東側の空き地部分中、右建物に接着する最低限度の部分を除く通路部分の使用関係は、前記認定のような経緯に照らせば、正しく右にいう事実上の使用関係にあたるものということができる。そして、被控訴人は、右空き地部分をその従業員又は寿司店への客の自動車の駐車場として使用することについて控訴人の了解を得てこれを使用していたのであるから、単なる事実上の関係に過ぎないとはいえ、被控訴人が右空き地部分を右のように使用すること自体が本件建物の用法違反その他本件賃貸借契約上の債務不履行又は付随的な義務の違反に当たらないことはいうまでもない。また、被控訴人は、従前から右通路部分を右のように自動車の駐車場として利用してきたところ、控訴人は、被控訴人と格別の協議を遂げることなく、突如として前記図面表示の位置にフェンスを設置し、さらに、右フェンスを公道まで延長する工事をしようとしたのであるから、訴外友部操が営業の妨げになるとしてそれを物理的に阻止したとしても、これをもって被控訴人に賃貸借契約上の債務不履行又は付随的な義務の違反があるとすることはできない。

(香川 越山 村上)

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